国際産学ワークショップ
第2セッション
「グローバル時代の高等教育−教育のTQMと世界標準化」
セッション紹介
セッション概要
 産業のグローバル化に伴って、高等教育そのものも、地球規模での競争力、相互互換性が求められてきている。また、教育コストの増大や企業が求める基本的な学習能力強化と継続学習ニーズは従来の教育の在り方そのものを変えざるを得ない。こうした状況の下、高等教育機関も遠隔授業といった新技術の導入や教育における品質管理(JABEE、APECエンジニア、単位互換など)概念の重要性を認識しつつある。キャンパスのもつ意味や学位認定の在り方、教育・学習の新たな捉え方等を視野に入れつつ、グローバル時代に求められる高等教育の新たな定義づけと課題について議論する。
座長・話題提供者
    氏名・役職
座長

井村 裕夫
日本産学フォーラム主査
京都大学 名誉教授、総合科学技術会議 議員

Hiroo Imura
Professor Emeritus,
Kyoto University

話題提供者

ディビッド・ワード
米国教育会議 会長

David Ward
President,
American Council on Education

大橋 秀雄
工学院大学 学長

Hideo Ohashi
President,
Kogakuin University

モリー・ブロード
ノースカロライナ大学 学長

Molly Corbett Broad
President,
The University of North Carolina

岡部 洋一
東京大学 教授

Yoichi Okabe
Professor,
The University of Tokyo

コメンテーター

山崎 禎昭
石川島播磨重工業株式会社 副社長

Tadaaki Yamazaki
Executive Vice President,
Ishikawajima-Harima Heavy Industries Corporation Limited

ディビット・ストラングウェイ
カナダ・イノベーション財団 理事長

David W. Strangway
President and CEO,
Canada Foundation for Innovation

ウォルフガング・ウェーバー
パデルボーン大学(独) 学長

Wolfgang Weber
President,
Paderborn University, Germany

吉田 文
メディア教育開発センター 教授

Aya Yoshida
Professor,
National Institute of Multimedia Education

議論内容・配付資料

 井村裕夫氏(日本産学フォーラム主査、総合科学技術会議議員)が座長を務めたこのセッションは米国、日本の高等教育の質に関する新たな動きと教養教育とe‐ラーニングを切り口に議論を行った。

 デイビッド・ワード氏は米国の大学が大きな環境変化の中で自らの位置づけを模索しているとし、大学をひとつの概念で語ることができた時代は終わったとしている。ワード氏は、大学の問題を(1)アクセス、(2)質、(3)自治、(4)キャパシティ、(5)アカウンタビリティ、(6)コラボレーションという面から現在生じている現象を具体的に説明した。 従来の大学は(1)〜(3)を取り扱っていれば良かったが、 今後はそれに加えて(4)〜(6)にも取り組まなくてはならないとし、大学の検討しなければならない要素や課題が極めて多く、複雑で経営のレベルを高める必要があることを示した。

 大橋秀雄氏(工学院大学学長)は日本技術者教育認定機構の設立運営の経験から「教育の質の保証−日本の現状」というテーマで日本の課題を述べた。日本での大学の評価や認定システムをレビューし、日本の制度の中では評価(evaluation)と認定(accreditation)とが曖昧に取り扱われていると指摘した。米国、ドイツの同様のシステムも紹介し、最近制定された日本のものとの比較から、過剰な政府の介入がみられるとしている。グローバル時代になり、技術者などの専門技術者が世界的に活動しなければならないが、そのためには世界に通じる高等教育の質の保証を行うことが重要になってくると指摘した。

 フランシス・デュ・ヴィネイジ氏(米国教養教育学会アクレディテーション部長)は、教養教育と一般教育はアテネの都市国家時代から自由で責任ある人間的な市民としての能力を育成することを目的とし、ダイナミックに拡大する他民族、多言語の世界に対する要請として登場したことから、極めて今日性を持っていると指摘した。グローバルな市民であるための一般教育は画一的でなく、地域の文化や思想を吟味したものであること、一般教育や教養教育は単なる専門教育の入り口ではなく、世界や共通の人間性についての視点を打ち出せること、市場迎合的で単なる職業教育だけをしてはならないこと、今だけの教育でなく、思想や表現など、人類の業績を次世代において活用可能にするようなものが必要であるとした。

 岡部洋一氏(東京大学教授)は「日本のe‐ラーニング(e-learning in Japan)」というテーマで企業、大学でのe‐ラーニングの活用状況についてレビューした。現在の技術の進歩を考えると大学の仕事のかなりの部分がe‐ラーニングに代替する可能性があり、大学に残される役割はリソース・サプライヤーとヒューマン・コミュニケーションとなるという考えを披露した。これによって学習内容の標準が確保できるメリットがでてくるとともに、従来、先生と学生間のヒューマン・コミュニケーションが中心であったものが、同級生、同窓生、など大学が創り出すの多様なコミュニティ形成を促進していく可能性もでてくるとした。日本では気付かれていないが、e‐ラーニングによって海外の学生を引きつけることが出来る可能性もある。また、産学双方でリソースの開発し、相互利用することもこれから始まるとした。

 この後、コメンテータの山崎禎昭氏(石川島播磨工業副社長)は爆発的に増大する知識を限られた時間内で吸収しようとするので、新入社員の古典的学問領域での能力が弱くなっているとした。この分野に関しては機密が少ないので、 国際的なレベルの統一がやりやすいとし、統一化の推進を訴えた。ストラングウェイ氏は、環境の変化によって今回の議論にある同質化V.S差異化、個人としての財V.S公共財、専門教育V.S一般教養教育、という逆説的な要請を同時に満たすことが求められているとした。ウェーバー氏はドイツでの最近の大学のスタディプログラム変更が限定的なものに留まっており、今回の議論を聞いているとひとつのプログラムだけではニーズに対応できないのではないかと思っているとした。また、質の保証と言う面では、クオリティ・スタディ・プログラムという試みも産学でなされているが、今回の議論はドイツでのquality assuranceシステムを考える上で有用であるとした。吉田文氏(メディア教育開発センター教授)は、学生の出口での質の管理に触れ、現状では大学側は外部評価に不慣れで、自己評価に対する切実感も乏しいと指摘した。グローバル化に関しては、一般教養教育の国際的標準の可能性、国際的なe−ラーニングの質の保証、発展途上国独自の大学設立の保証、が問題となると指摘した。その後、ラウンドテーブルメンバーでの議論があり、大学と社会をつなぐパイプ、特に一般社会とのパイプの在り方、教育制度の普遍性について意見のやりとりがあった。

 最後に井村座長は、議論を振り返り、グローバリゼーション、知識ベース社会での知の膨大な蓄積、高いモビリティという社会のキーワードを提示、そうした社会での学生への教育は極めて難しい問題であり、多様化する中での質の保証、専門教育と一般教養教育のバランスも検討しなければならないとした。そして、知の生産性を上げるためには、自ら情報を整理し、知識にまとめてゆく能力をつけさせることが重要と指摘。大学は知識の時代に重要な役割を演じるため、その在り方を考えるのは重要かつ挑戦的なことであるとして締めくくった。

TEL:03-5733-6017  FAX:03-5733-6018 お問い合わせ ウェブサイトの利用に関して サイトマップ 
Copyright (C) 2002-2007 The Business-University Forum of Japan All Rights Reserved.